大阪市西淀川区の総合病院として大阪府知事より「地域医療支援病院」の承認を受け、地域医療の中核を担っている社会医療法人愛仁会千船病院(以下、千船病院)。救急医療に積極的に対応するとともに、とりわけ注力しているのが産婦人科領域です。
「2025年度の分娩数は2,600件を超え、大阪府でもトップクラスを誇ります」と話すのは、管理科で主任を務める川端氏です。また、地域周産期母子医療センターとしても位置付けられる同院は、母子医療の拠点としても大きな拠り所となっています。
こうした高度で多様な医療機能を支えるべく、院内では多くの部署が日々さまざまな物品を必要としています。病棟で使用する洗剤などの生活用品から情報システム関連の機器まで、幅広い備品や消耗品の調達・購買を管理科が一手に担ってきました。
しかし、その業務は非常に煩雑です。千船病院における購買のワークフローは、紙の複写伝票で行われてきました。各部署のスタッフは購入したい物品を2枚綴りの伝票に記入し、直属の上長の確認を経て週ごとに提出。受け取った管理科は、それらを取りまとめて最終チェックを行い、さまざまな法人向け通販サイトや取引業者に振り分けて発注するというのが、長年続いてきた主な流れです。
管理科でこの業務に携わってきた有吉氏は、「毎週火曜日に20~30の部署から集まってくる伝票を1枚ずつめくって発注先ごとに異なるフォームに転記し直さなければならず、仕分け作業には半日以上の時間を費やします。手作業が多いだけに間違いも起きやすく、返品対応などのロスもしばしば発生していました」と苦労を明かします。
さらに管理科の橋本氏は、このように続けます。
「特に情報システム部などから寄せられる専門的な機器の発注依頼では、希望の商品を特定するまでに長い時間を要することもありました。私たちにはよくわからない機器や備品が多く、説明や資料が添えられていたとしても、探し出すのが難しいというケースもあります。依頼者が通販サイトで検索した商品のリンクを付けてくれることもありますが、法人アカウントでは購入できない場合があり、代替品の確認にも大変な手間がかかっていました」
このような課題を抱えていた千船病院に転機が訪れたのは、2025年秋のことでした。「Amazonビジネスを管理科でも本格的に活用してみてはどうか」という提案が、法人組織(愛仁会グループ本部)経由で寄せられたのです。
「Amazonビジネスについては、日々利用する法人向け通販サイトの1つとしてすでに導入済みであり、紙の発注伝票と併用してきました。しかし、今回の提案のポイントはタブレットを各部署に配布し、それを通じて発注依頼してもらうという点にあります。導入することで紙の伝票で行っていた業務の負担が減る可能性があり、検討を進めました」(橋本氏)
もっとも当初この提案には懸念があったといいます。有吉氏は、「実は数年前にも各部署に対して各通販サイトへ各部署から直接注文してもらうように働きかけたことがあるのですが、現場スタッフの間で『紙の発注伝票のほうがいい』という意見が強く、定着しなかったのです。この苦い経験があるだけに今回も一抹の不安がありました」と振り返ります。
そこで同院は2026年1月、「まずは受け入れてもらいやすい部署から始める」という方針を掲げ、各部署にログイン権限を付与した上でタブレットを配布し、タブレットと組み合わせたAmazonビジネス利用の試験運用に踏み切りました。
試験運用を行う最初の部署に選んだのは情報システム部です。その理由について川端氏は、「日常業務を通じてさまざまなITシステムに慣れ親しんでいる情報システム部のスタッフであれば、タブレット操作に対するハードルは一切なく、前向きに受け入れてもらえると考えました」と語ります。
実際、効果は即座に現れました。最も象徴的なのは「商品を探す手間の削減」です。橋本氏は「依頼者はタブレットを使ってAmazonビジネスのサイトに直接アクセスし、必要な備品・機器を特定した上で申請してくれます。おかげで不明点を確認するために、何度も繰り返していたやりとりが根本からなくなりました」と導入効果を語ります。
加えて特筆すべきが、Amazonビジネスの購買ルールを活用した業務効率化です。前述のように千船病院では、各部署のスタッフが必要な備品を申請し、上長が承認した上で、管理科が最終チェックを行うことではじめて発注が確定します。これと同様のワークフローをAmazonビジネス上で定義することで、一連のプロセスがオンライン上のみで完結できるようになりました。
「情報システム部がAmazonビジネスを利用した分だけ、紙の発注伝票の枚数は確実に減っており、仕分け作業の負担は軽減しています。また、承認依頼はメールで即座に通知されるため、急を要する備品購買のリードタイムも短縮されました」(有吉氏)
なお千船病院では、Amazonビジネス経由での購入上限を1万円に設定しています。
「院内の既存ルールとして、1万円を超える物品購入には別の申請方法が定められているため、これに準拠する形をとりました。このように当院固有の管理基準や制度にあわせて承認基準(もしくは承認ルール)を柔軟に設定できることも、Amazonビジネスならではの魅力であることを改めて感じました」(橋本氏)
こうした情報システム部での先行導入による成果と手応えをつかんだことで、千船病院はタブレットの配布先を検査科、リハビリテーション科、保育科(兼ひよっこ保育園)、看護部長室などへと段階的に拡大しています。そうした中から、新たな効果も現れています。付属の保育園であるひよっこ保育園が購入した備品の配送先変更もその1つです。
「保育園は当院とは道を隔てた別棟にありますが、これまでは管理科が他の部署とまとめて発注していたため、備品をその都度受け取りに来てもらう必要がありました。そこで保育園が購入した備品は直接配送されるようにAmazonビジネスの設定を変更しています。園の担当者からは『園内のタブレットから注文した備品が、直接手元に届くのはとても便利』と好評を得ています」(橋本氏)
さらに、価格面でも品目によってはメリットが生まれています。これまで千船病院では過去からの取引を継承し、同じ商品を同じ業者から購入する傾向が強かったのですが、Amazonビジネスからレコメンドされた電池や消臭剤などの消耗品について価格比較を行ったところ、既存の業者よりも安価に購入できることが明らかになりました。
「日々の業務に追われて個々の備品の価格をじっくり検討する余裕がなかっただけに、購買先変更の良い機会となりました。引き続き、より価格インパクトの大きい備品から順に購買先の見直しを行っていきたいと思います」(有吉氏)
もっとも、現時点でタブレットの配布を完了した部署は、千船病院全体から見ればまだ一部にすぎません。そこから得られる作業時間短縮など業務効率化の効果もまだまだ改善の余地が大きいといいます。その意味でも、全院レベルでのタブレット利用促進が急務であり、管理科では特に看護部門への拡大を最大の目標に掲げています。
「看護部門は院内でも最大の購入ボリュームがあるため、Amazonビジネス経由の発注に切り替えることで必然的に備品購買はよりスムーズになり、ひいては私たちの作業負担も大きく軽減されることになります」(有吉氏)
一方で、全部署へのタブレットの一斉展開には慎重な見方もあります。各部署の上長と管理科長による二重の承認が必要なワークフローや、購入できる備品の価格上限などのルールが設定されているとはいえ、発注権限をすべてのスタッフに開放した場合、想定外の発注が増えるリスクがあるためです。
「それでも病院を取り巻く昨今の医療ニーズの変化や経営状況も踏まえると、現状でとどまるわけにはいきません。タブレットを活用した購買プロセスの効率化とコスト削減、より厳密なルール設定に基づくガバナンスの確立をバランスよく実施することで、一歩ずつでも合理化を進めていきたいと思います」と川端氏は語り、Amazonビジネスが持つ可能性を最大限に活かした業務変革の将来を見据えています。
*取材時期2026年4月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。
社会医療法人 愛仁会 千船病院の事例(PDF)はこちらからダウンロード
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