【登壇者】
 ダイキン工業株式会社
 総務部 間接材購買グループ長 川端 秀和 氏
三菱重工業株式会社
 バリューチェーン本部 SCM部 調達企画グループ 調達革新チーム 主席 間接材・特定材集中購買ストラテジーリーダー 西崎 友崇 氏
戦略的なカタログ購買の取り組みの背景にあったものとは
カタログ購買に関する取り組みの出発点について、ダイキン工業の川端氏は、「カタログを拡充しようといった調達目線の取り組みではなく、決算早期化の目的から取り組みをスタートしました」と明かします。
同社はこれまで月次決算時の経費処理に膨大な工数がかかることが課題でした。業務を改めて見直すと、間接材の購買プロセスが整理されておらず、コンプライアンスリスクの課題も浮き彫りになりました。そこで、これを機に同社ではカタログ購買の仕組みの導入のみならず、購買プロセスの見直しにも乗り出しました。
川端氏は、カタログ購買の刷新を着手するにあたり「ユーザーへ、メリットを一番感じていただきたかった」と振り返ります。同社は2018年にクラウド購買システムを導入し、「システムに実績データが蓄積されたことで、パンチアウトカタログ接続のあるべき姿を検討することできました」と川端氏は語ります。こうした戦略的なユーザーエンゲージメントにより、現在では、同社におけるカタログ利用率は40%未満から75%まで大幅に向上しています。
一方で三菱重工業における調達の取り組みについて、同社の西崎氏は、「管理・統制」「事業支援」「インフラ導入」の3つの柱があると説明します。その上で間接材については、「多種多様な間接材購買は、発注の効率化と可視化が従来の課題でした」と振り返ります。
西崎氏は間接材購買のカタログ設計にあたっては「スピード感」と「全体最適と個別最適のバランス」を最も重視したポイントとして挙げます。
間接材のカタログ整備では効率性を追求すると「全社最適」が重要です。しかし「我々が独りよがりで全社カタログだけを推進しても、現場がそれを受け入れて使われなければ意味がありません。全社最適と事業所最適を両立しながら短期間で取り組みを完了させるためにも、両者を分割してカタログを整理していきました」と西崎氏は説明します。
両社が実施した工夫 ―最大公約数の標準化と体感型アプローチ
ダイキン工業では取り組みにあたって標準化を重視し、「部門の特性にあまり応えることなく最大公約数で標準化を行った」と川端氏は説明します。ただし、部門固有のニーズには「ダイキンのオリジナルカタログを作り込む」ことで対応し、パンチアウトカタログサイトとの接続と自社カタログの両方をミックスして活用しています。
現在同社では、購買プロセスは4種類に限定・集約して標準化しており、①カタログ購買、②見積もりベースの都度購買、③契約ベースの支払い、④請求書での支払い。これにより、プロセスの統一化を図っています。
これまでのカタログ購買推進の成果について川端氏は「試算ベースですが、累積で46,000時間が全社で効率化できています」という具体的数値を示し、「3~4年の実績からユーザーの購入者動向を『ついで買い』傾向まで分析し、そのデータをもとに各パンチアウトカタログサイトと交渉してカタログ最適化を実施しました」と説明しました。
三菱重工業では、同社の中でも重要とされるMRO商品(保守・修理・運用関連商品)の利用促進について、その取り組みをこう説明します。
「職人の方が実際に触っていただけないと購入につながらないため、Amazonビジネスと協力して展示会を実施しました。広島では500人以上が参加し、展示会の翌週にはAmazonビジネス経由での購買が180%増加しました。参加者からはAmazonのプライベートブランドやMRO商品の豊富さ、価格競争力に驚く声が多く上がりました」(西崎氏)
また、西崎氏は「データによってできる施策はたくさんあります。時間をかけてでもデータをしっかり取ってやるべきです」と語ります。実際に、Amazonビジネスとの展示会では「実際の社内の購買データをAmazonビジネスに提供したうえで、参加者にそれと同等のAmazonプライベートブランド品を見ていただく機会を作りました」と、データを活用した戦略的パートナーシップについて語りました。
ユーザーや経営層への理解・利用促進の取り組み
三菱重工業では、経営層へのエンゲージメント強化にも注力しています。その具体的な方法として、同社ではBIツールを使って月次でアップデートされる可視化レポートを、各事業部の経営陣全てに配信しています。
「間接材は直接材に比べて、全社のためにやっていることがわかりづらいため、活動の意義を理解していただくためにも、経営層への働きかけが重要です」と西崎氏は語り、継続的なレポートの必要性を強調しました。
また西崎氏は「昔のようにシステム入れたらおしまいではなく、システムを育てるものだと思っています」として、問い合わせ窓口を設置し継続的改善を重視していると述べました。
一方でダイキン工業 川端氏も実際のユーザーアンケートを示しながら「自分たちがやったことが本当にユーザーにとって響いているかは定期的にチェックしていかないといけません。ユーザーは5年以上同じものを使っていても良くなるのであれば理解を示してくれる」として、ユーザーからの声を大切にする姿勢を示しました。
ダイキン工業では、カタログ購買のKPIは金額ベースではなく、ロングテールの効果が見える件数ベースでモニタリングしており、その数値を上げるために「ユーザーが迷わずに使える環境づくり」を重視しています。パンチアウトカタログサイトの充実に加え、部門特性でカバーしきれないものは「オリジナルカタログで対応」し、購入させたくない商品は「マスキング機能で非表示にする」ことで、ユーザーの混乱を防いでいます。
「システム上の改善だけでは認知されにくいため、社内PR資料を定期配布して地道にアプローチしています。新たなパンチアウトカタログとして2024年のAmazon ビジネス導入時にもAmazonビジネスの協力を受けながらPR資料を作り、新サービスの認知向上を図りました」と川端氏は説明します。
地道な取り組みと組織的サポートがカギ
最後に、これから取り組む企業に対して川端氏は「ガバナンス強化がトータルでのコストダウンにつながります」という成果を示した上で、「我々も先達の企業様へヒアリングしながら多くのことを学びました。このような場でいろいろと交流させていただきながら、我々自身もさらに進化していきたいと思います」と、学び合いの姿勢を示しました。
西崎氏は「間接材の1〜2%削減は目立ちませんが、商品を売る1%と同じかそれ以上に大変なことです。でも非常にやりがいがあります」として、改めて間接材調達の意義を語りました。その上で「展示会やデータ分析などは軽視されがちですが、これが本当は大切です。管理者の方々がしっかり目を配っていただければ、盛り上がって改革は必ず進んでいくはずです」と、現場への関与と管理者の役割の重要性を語りました。
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