【登壇者】
 パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社
グローバル調達本部シニアアドバイザー 東京代表 三好 満  氏
アマゾンジャパン合同会社
 Amazonビジネス事業本部 事業本部長 石橋 憲人
縦割り組織を乗り越え、共通プラットフォームを構築
従業員約25万人、購買バイヤー約5,500人。これほどの巨大組織で、膨大な調達部門の一本化を成し遂げたのが、パナソニックグループです。
この「調達改革」の旗振り役を担ったのが三好氏。1984年に入社後、2007年に調達職へと転身し、2015年以降はグループ全体の調達機能を集約するプロジェクトを主導してきました。その後、持株会社制への移行に伴い、グループ全体のオペレーション機能を統括するパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社に異動し、グローバル調達本部の本部長に就任。現在は同本部のシニアアドバイザーを務めています。
改革における取り組みについて石橋に尋ねられた三好氏は、「とにかく大変でした」と振り返りました。最初に立ちはだかったのは、縦割りの組織の壁でした。
「ピーク時には100を超える事業部があり、それぞれが1つの会社のように高い独立性を維持していました。事業間の情報共有を嫌い、時にはカニバリゼーションが生じるケースもあったほどです。『そのような文化を変えて、1つの調達を実現していくことなどできるのか』と、完全な確信を持てないままスタートしたように思います」(三好氏)
そうした状況下でも、粘り強く取り組みを進めた結果、まずは直接材における共通購買プラットフォームの構築に成功。続けて間接材の共通購買にも着手しましたが、そこでまた新たな課題に直面することになりました。
間接材購買の共通化は、「社員を不幸にしないため」
三好氏は、「間接材購買では何をいくら購入しているのかが見えづらい。ここが一番苦しんだポイントでした」と振り返ります。直接材の場合、社内のシステムから購入した量や金額を把握しやすいのですが、間接材にはそれが困難でした。パナソニックグループはM&Aを繰り返してきた経緯があり、グループ内で運用されている間接材システムも多様化していました。「それぞれ共通のコンセプトがなく、間接材購買の全体像を把握するのが極めて難しい状態でした」と三好氏は語ります。
石橋も「間接材購買の改善は、直接材に比べてどうしても優先度が下がってしまいがちですよね」と同意を示しました。しかし、三好氏によれば、パナソニックグループにはこの改革をどうしても遂行したい理由があったのだと言います。
「間接材は現場の担当者が直接発注するケースがほとんどのため、コンプライアンス上の問題が発生しやすい。実際に社内で違反が明らかになった際には、経営陣の間でも『本来であれば未然に防げたはず』『社員を不幸にしやすい環境を作ってしまっている』という反省の声が上がりました。それを踏まえて『違反が発生しないような仕組み、起きても止められるような仕組みを作るべきだ』という共通認識のもとで、間接材購買プラットフォームの構築を本格化させたのです」(三好氏)
経理・人事・法務を巻き込み、取り組みを遂行
こうしたパナソニックの決断に対して、石橋は「具体的に何から着手したのか」と三好氏に尋ねました。最初に三好氏が挙げたのが、「購買活動の各フェーズの管理」です。
見積もり・発注・検収・支払いという一連の購買プロセスを1人で完結できてしまう状態は、コンプライアンス違反の温床になり得えます。だからこそ、「それぞれの段階で必ず通過しなければならないプラットフォームを設けることが重要でした」と三好氏は語ります。こうして購買活動の各フェーズを分けて管理しつつも、全体として連携が取れる独自の間接材購買システムを構築していったのです。
とはいえ、「事業部側からは反発しかありませんでした」と三好氏。そこで力を入れたのが他部門の巻き込みでした。経営陣の賛同を得るのはもちろん、経理・人事・法務という「ガバナンス3職種」にも改革の狙いと必要性を説明し、同じ方向を向いて動いてもらえるように働きかけたのです。
「例えば、経理部門には『自社の購買プラットフォームで購入可能なものは、必ずその枠組みの中で調達すること』『その条件に該当しない場合は、支払い対象として認めない』という強いメッセージを発信してもらい、出金伝票による事後請求に牽制をかけてもらいました。また人事部門には、組織変更をプラットフォームに自動反映できるようにするための協力を仰ぎました。グループの組織変更は年に2度、国内だけでも10万人規模、3,000〜4,000の部署が関わる組織改編が行われます。人事部門の協力のおかげでシステムの更新にかかる手間を大幅に削減できたのは、大きなポイントだったと思います」(三好氏)
自社独自の間接材購買システム完成にこぎつけるまでに要した期間は2、3年ほど。三好氏は「時間とお金がかかりました」と苦笑しつつも、「最終的には他部門を巻き込んだ地道な取り組みが実を結び、事業側からも納得してもらえました」と手応えを覗かせました。
立替精算は年間約10万件。Amazonビジネスで内実を可視化
こうした「自前の仕組み」がありながらも、パナソニックグループはAmazonビジネスの導入に踏み切りました。石橋にその背景を問われた三好氏は「立替精算」に言及しました。パナソニックグループ全体の立替精算は年間約10万件にものぼり、その多くがAmazonでの購入によるものだったと明かしました。
「パナソニックグループには多くの開発技術者が在籍しています。そうしたスタッフは最先端のIT機器を使用しますが、会社として選ぶなら実質的にはAmazonビジネスしか選択肢がありません。また、世界中の競合商品をいち早く入手して分析しなければならない場合にも、Amazonがやはり便利なのです。この購買実態を見える化するには、Amazonビジネスを導入するのが最適だと判断しました」(三好氏)
同時に、Amazonビジネスを社内の正式な購買プロセスに組み込むことで、コンプライアンス違反の防止にもつながると考えました。
プロセスへの意識が、調達・購買チームのプレゼンスを高める
最後に、次世代を担う調達・購買リーダーたちへのメッセージとして、三好氏は調達の「プロセス」に目を向けるべきだと訴えました。
「モノが不足している時には、なんとしてでも調達することが求められ、逆にモノがある時には、コストの最適化が問われます。調達は結果ばかりに注目しがちですが、その結果に至るまでの過程の正しさも重要です。調達・購買を担う皆さんは、『正しい調達プロセス』を理解しているはず。だからこそ、それを経営陣に強く訴えかけ、経営に貢献していってほしい。その結果として、日本社会における調達機能そのもののプレゼンスが高まっていくことを願っています」(三好氏)
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