国内で初めてSAP Aribaと連携。
ガバナンス強化にも貢献
1917 年、横浜ゴムは日本の近代化に不可欠なゴム製品の国産を目的として創業しました。現在、売上の約8 割を占めるタイヤを中心に、工業製品やスポーツ用品も展開。国内に留まらず、北米や欧州、アジアなどにも進出し、売上の半分以上は海外市場でのものが占めています。グローバル企業として社会的責任も強く意識しており、「トップレベルの環境貢献企業」を掲げるほか、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の取り組みにも力を注いでいます。
その中で私たち資材調達部が担っているのは間接材の調達です。事務所や工場で日常的に使うものの購入、また建屋の建築資材、エネルギーの購入などを担いながら、コスト削減や調達の仕組みそのものの効率化も推進しています。現在、これら業務においてもコンプライアンスやガバナンス強化は重大な課題。天然ゴムなどの直接材ばかりでなく、間接材においても、“適正かつ透明性の高い調達”への社会的要請は年々高まっています。今回のAmazonビジネス導入も、そうした状況に対応するための調達業務改革の一環として行われました。
従来から、横浜ゴムでは本社及び国内全7 拠点にSAP Ariba を導入し、それと複数の外部EC サイトを連携する形で調達を管理してきました。ところが、現場からは「既存のEC サイトでは買えないものが、Amazon にはあるのだが……」。そんな相談が度々寄せられていたのです。調べてみると、Amazon ビジネスではない個人向けAmazon を使ってそれぞれ必要なものを購入している例も想像以上に多く見られました。それだと、購入内容の細目がわからなかったり、承認プロセスがシステムに記録されなかったりと、調達に不透明な部分が出てきてしまいます。
ならば、Amazonビジネスの導入を――というのが導入の経緯です。ただし、当社の調達の基本はSAP Ariba ですから、導入にあたってはシステム連携が大前提。そこでAmazon のご担当にも尽力いただきながらすり合わせを行うと、実質約1カ月と非常にスピーディにシステム連携が完了しました。国内でのSAP Ariba とAmazon ビジネスの連携は初めてとのことでしたが、作業はとてもスムーズでした。
第一の導入メリットは、やはり適正で透明な調達をより高いレベルで実現できるようになったことです。品揃えに定評のあるAmazon ビジネスと連携することで、間接材についてオンライン購入できないものはほとんどないと言っていい状況になりました。SAP Ariba には、調達における承認フロー、購入商品や金額の制限など、あらゆるルールを組み込んでいますから、一つ一つの物品購入について正確なデータが残り、必要なときには外部へ明確に説明できる環境が強化されることになる。これは、経営上も大きな利点です。
なぜなら、調達というのは事業活動の根幹を支えるもの。そこに不備や不正があれば重大な経営リスクにもなりかねません。特に現在、欧米ではESG の視点が重視されていますから、グローバル企業にとって経営の透明性やガバナンス体制は企業評価に直結してしまうのです。
Amazonビジネスは、導入直後から各拠点で順調に利用されています。それに伴い、実は私たち資材調達部の生産性も確実に向上しています。これまでSAPAribaで購入できないものについては、資材調達部に見積もり依頼が入ることが少なくありませんでした。そうなると、複数の業者に相見積もりを取ったり、依頼者に連絡したり、数日はその作業に関わることになります。Amazonビジネス導入後、そうした業務に割く時間が大幅に削減され、より本来的な業務に集中できるようになりました。
例えば設備投資やエネルギーなど金額の大きな調達領域でコスト削減を図り、経営に貢献する。また企画部門として、より効率的な調達の仕組みを立案する。そうした業務にいっそう時間をかけられるようになったことは、Amazonビジネスがもたらした見逃せない価値だと感じています。
調達業務改革を進めていくにあたって、Amazonビジネスの分析機能も活用していきたいと考えています。各地の拠点でいったいどんなものが購入されているのか――。カテゴリー別の購入実績を確認したところ、これまでわからなかった現場のニーズを把握することもできました。当初、事務用品やオフィス機器が中心だろうと予測していたのですが、思いのほか現場で使う家電の購入が多く見られたり、夏場は熱中症対策として空調ファン付きジャケットやまとまった量のスポーツドリンクなども買われていたのです。
こうした現場のリアルなニーズを掴めれば、一括購入によるコスト削減など経費利用の最適化も実現可能です。Amazonビジネスの購買分析ダッシュボードはインターフェースが優れており、直感的に操作できるので、調査が必要な商品を抽出したり、そのほかの面でも賢く使っていければと思います。
今後、資材調達部としてデータ分析や自分たちでの利用に基づいて、全社への情報の発信も行っていきたいと考えています。例えば、私たちが在籍する平塚製造所では地域住民の方々を招いたエコイベントを行っているのですが、その際の景品の調達でもAmazonビジネスが活躍しました。景品に使う自転車など、普段にはない購入にあたって、これまでは個別に各業者に見積もりを取り、購買に時間がかかっていたのですが、その作業がなくなりました。
一方、購買申請の承認を行うマネージャー層が、「台風で出社できなかった日にスマホのアプリで許可した」という例もあります。場所や時間にとらわれないワークスタイルが広がる中、いつでも、どこでも申請や承認ができることの重要性は、将来的に高まっていくに違いありません。多様な利点がある今回のAmazonビジネス導入ですが、一番の意義はやはりSAPAribaを通した透明性の高い調達の範囲を拡大できたこと。これよって経費の見える化が一段と進み、ひいてはガバナンスの強化や経営リスクの低減にも貢献するはずです。今後も、調達の透明性をいっそう高めながら、業務効率を向上していけるよう、調達業務改革を推進していきます。
横浜ゴム株式会社
資材調達部 資材調達課 課長
横浜ゴム株式会社
資材調達部 資材調達課 主任